
未来の“昆虫博士”宮本剛君が小学生のころから集めてきた昆虫の標本。準絶滅危惧や夜中まで起きて採集したもの、自分で育てたものもある
中学入学祝いに親せきたちから買ってもらった実体顕微鏡(左)で昆虫を観察する準備
ほうきと網使って
宇佐市江須賀の駅館川河川敷。近くに住む長洲中学1年の宮本剛君(13)が、左手に持った網に向けて、右手のほうきで草を払った。「スイーピング」と呼ばれる昆虫採集の手法だ。
「これは甲虫、オオヨコバイ…」。網の中を確認しながら体長数ミリの虫を、ポケットから取り出した吸虫管に吸い込んだ。
下処理を済ませたら、中学の入学祝いに親せきたちから買ってもらった実体顕微鏡で観察し、標本を作る。「虫を捕ることが楽しい。特に珍しいもの。この辺りで捕れたことがないものとか…」と、昆虫採集の醍醐味(だいごみ)を話す。
宮本君は、県内の昆虫好きの人たちが集う大分昆虫同好会の最年少会員。保育園のころから昆虫を追い回し、小学校生になると採集した昆虫を標本にしたり、昆虫を育てて生態を観察するようになった。
県北部で初の採集
標本の中には、自宅の庭で採集した準絶滅危惧(きぐ)の「トウキョウヒメハンミョウ」などの珍しい昆虫も。小学1年の時に同市院内町で捕まえた「ミカドアゲハ」は後に、大分県北部で初めて採集・同定された物だと分かった。
昆虫採集のテリトリーは、自宅裏の駅館川から始まり市内全域、中津市、日田市、九重町と広がっている。移動や飼育を手助けする母親の由紀さんも、いつの間にか昆虫に詳しくなった。「好きなことが一つあったら、人は死なない。昆虫が剛の生きる力になり、昆虫を通していろんなものを見てくれれば」と由紀さん。
「巡査」の一番弟子
「目下の一番弟子。将来が楽しみ」と宮本君に期待を寄せるのは、「昆虫巡査」の異名で知られ今春、県警を退職した日本昆虫学会正会員の佐々木茂美さん(60)=日田市上城内町。同好会の先輩でもある佐々木さんは、宮本君が捕って送ってきた昆虫を標本にして送り返し、より深い虫の世界へ導く。
「将来は、昆虫の研究ができる仕事なら何でもいい」と宮本君。同好会には、高校生で入会し、大学を出て国の機関でトップクラスの昆虫の研究者になった先輩がいる。 (文・田崎啓三、写真・三橋孝夫)
大分昆虫同好会は1976年に発足し、会員は県外在住者を合わせて100人余り。県内の昆虫の分布や生態を調べてデータを蓄積している。年1回発行する会報「二豊のむし」は全国の昆虫研究者や愛好者の間で評価が高い。三宅武副会長は「現代人が自然から離れたためか、若い会員が減った」と憂慮。会員が県内各地である昆虫教室に参加して虫の楽しさを伝え、昆虫愛好者のすそ野の拡大に取り組んでいる。
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