
詩吟の練習に励む(前列右から)荘田美結ちゃん、宗愛莉ちゃん(後列右から)佐藤百恵さん、山口鈴華さん、新田紗也加さん、石堂未稀さん=津久見市中央町の詩吟教室「桜分会」
津久見市のJR津久見駅の近く、商店や飲食店の集まる通りに淡窓伝光霊流津久見詩道会(森脇乾霊会長)の「桜分会」の教室がある。引き戸をくぐると、店風の土間の部屋は石油ストーブで暖まり、立ち上る鍋の湯気で空気は柔らかい。そこに女子高校生や、母親に連れられた幼稚園児ら6人が大会前の臨時練習に集まってきた。通常なら毎週1回、土曜日の午前中の2時間が子どもの部の練習時間だ。
最初は色や形から
指導者の菊池恭子さん(58)=市内中央町=のよく通る声が響いて練習が始まる。軽くストレッチをした後、「あ〜、え〜、い〜」と音階を入れて発声練習をする。次いで、詩を覚えている上級生は声を上げて詩を読む。
「山を看(み)れば高きこと巍々(ぎぎ)たり」「海を観(み)れば闊(ひろ)きこと洋々たり」(明治時代の教育・宗教家の新島襄が作った漢詩の一部)。
ここで菊池さんが「この山の大きさは?」「詩の印象の色は?」と質問する。子どもたちは「大きい」「青」などと答え、目を閉じて詩の世界を広げる。「小さい子たちは詩の意味が分かりません。それで最初は、色や形から入ります」との配慮だ。
アドバイスを受けて、言葉が前に出てくるようになるという。小柄な子どもたちからとは思えないほど声は力強く合わさり、部屋を震わせる。
幼年の部で全国V
背筋をピンと伸ばす練習の合間やお茶の時間には笑いが満ちる。中学、高校の大会で幾度も県優勝した新田紗也加さん(16)=津久見高校1年=は「高校の漢文で満点だったのがうれしい」、2009年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部で優勝した佐藤百恵さん(11)=津久見小学校5年=は「練習より、後でみんなでお菓子を食べながら話すのが楽しい」。少女に戻る一瞬だが、向上心はしっかりと秘めている。同3位の山口鈴華さん(11)=同=も「少年の部で全国優勝したい」と言う。
「思いやれる子に」
菊池さんは「社会では競うことは欠かせない。でも子どもたちは残酷で、つい言葉で相手を傷つけてしまう。この子たちはライバルを思いやることができるようになってほしい」と話す。
そして、詩道会の子どもたちに託す。「若者の言葉は平板でよく分からない。詩吟を通じて美しい日本語を次の世代に伝えてほしい」
(文・周藤譲 写真・椎原新二)
「桜分会」は淡窓伝光霊流津久見詩道会の子どもの部として1995年、菊池さんが始めた。現会員は6歳から18歳まで8人。最長で所属約10年。全国吟詠コンクール決勝大会は昨年9月、東京であり、九州地区代表の佐藤さんは漢詩「菊花」(白居易)を吟詠。声の伸びと耳の良さでアピールした。ほかの会員も別の県・国レベルの大会で活躍している。
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