料理のほとんどが地元で取れる旬の食材を使って作られる家庭料理。左端は農泊者をもてなす時枝仁子さん
新緑の季節、宇佐市安心院町の農村に出掛けた。県内のグリーンツーリズムの先駆けとして、農家が自宅に宿泊者を迎え入れ、家庭料理を振る舞う「農泊」が盛んだ。
時枝仁子さん(55)は地域の元気なお母さん。家を訪ねると、大阪から来た宿泊者の上角敦彦さん(57)、清子さん(56)夫婦も参加して、にぎやかに夕飯の支度が始まっていた。製めん機でうどんを作り、秋に掘っておいたヤマイモをする。「田舎に帰ってきたような気分。子どものころにしたことがあり、懐かしい」と顔をほころばせる。
メニューは野山や畑で取れる旬のものばかり。「味が濃くて甘い季節の食材には『自然の力』を感じる。この新鮮さは何よりのぜいたく」と時枝さん。タケノコやフキの煮物、ワラビの酢漬け。隣家からのおすそ分けで作ったミツバのおひたし。地域のおばあさんに作り方を習ったこんにゃくの刺し身に、豚肉と野菜のいため物。食卓に乗り切らないほど皿が次々と並ぶ。
「農村の心地よい風とのどかな景色に触れ、優しい気持ちになってほしい。食は地域の良さを伝える最上の手段」と時枝さん。この土地で命をはぐくみ、引き継がれてきた味に故郷を求め、多くの人が集う。守り伝えていこうとする農家のお母さんたちとの交流が根付いてきている。
メモ
1996年に地元の農家が中心となって安心院町グリーンツーリズム研究会が発足。地域を挙げた取り組みがスタートした。農家の女性の副業として、今では十数軒が常時農泊の受け入れをしている。「遠くの親せきのように迎え、しっかり向き合った心の交流をしたい」と、どの家も受け入れは原則1日1組限定。農家の暮らしを体験できる。