すしの保存技術を開発した岩佐洋志さん(左)と福永守さん=佐伯市野岡町の「丹匠」
二年間続いた「おおいた食の匠(たくみ)たち」もこれが最終回。大きな夢のある話で締めくくりましょう。すしの”握りたてのうまさ”を二日間、冷蔵保存する技術を独自に開発。全国に通信販売し、世界にも売り出そうというすし職人二人だ。
佐伯市野岡町にあるベンチャー企業「丹匠(たんしょう)」。調理場の中で岩佐洋志さん(59)と福永守さん(68)が腕を振るっていた。ヒラメ、サバ、アジ、サヨリ…。次々にすしが出来上がり、箱に詰められていく。
「埼玉の注文は航空便だから急いで」「次は福岡ね」。作業の途中、関東のバイヤーから電話が入った。「めちゃめちゃうまいですねえ」。電話口の声は少し興奮していた。
”世界一”をうたう佐伯ずし。二人はそれぞれ市内に自分の店を構える職人だ。「佐伯の素材の素晴らしさを広く知ってもらいたい」との思いから、すしの発送ができる保存方法を約一年間かけて研究。昨年から事業展開を始めた。
新しい保存方法は、実は多くの伝統技術を駆使してつくり上げた。「なれずしができた昔から、日本人はすしを保存する技を高めてきた。殺菌作用がある薬味を使うなど、いろんな要素を重ねていったんです」と磨き上げた技に自信を見せる。
海外へもすしを売り込もうと、経済産業省の「ジャパンブランド育成支援事業」を受けてアジア各地を視察。昨年十二月には、アラブ首長国連邦のドバイで在ドバイ日本総領事館が開いたパーティーに参加した。保存したネタとシャリを持ち込み、現地の王族や富豪らの前で握ったすしは大好評。既に商談も舞い込んでいるという。
「すしは日本が誇る一つの芸術品。英語のできる職人を育てて海外に出店できるよう、もう動き始めていますよ」と福永さん。「豊後水道は神様からの贈り物。佐伯の産物を日本全国や海外に届けたい。”世界制覇”が夢ですね」と岩佐さん。
「二人合わせて百二十七歳だが、まだまだ、どんどん働ける。われわれが先頭に立って動き、技術を若い人たちに継承していきたい」。次の目標に向かって、二人の「匠」の息はいつもぴったりだ。
(佐伯支社・小林大輔)